サイゼリヤ創業者・正垣泰彦さんから学び実行した「経営の原理原則」

2017年に出版した電子書籍『経営道 Kindle版』は、私のメンターであるサイゼリヤの創業者・正垣さんから学んだ経営の原理原則をまとめた一冊です。「投資とはコストダウンなり」「ROI20%厳守」「発明するな、発見せよ」など、正垣さんから学んだことを挙げればキリがありません。このブログの原稿を執筆している今現在、私はイタリアに来ています。なぜ今、イタリアにいるのか。それには深い理由があるのです。

 

体験できなかったローマの「リストランテ・マリアーノ」

私が勝手に崇め奉っている、師匠でありメンター。まだ30代だった私に、ビジネスの原理原則を教えてくれたのが、サイゼリヤの創業者である正垣泰彦さんでした。正垣さんがイタリア料理の店を作ろうと決心したのは、ローマのレストラン「リストランテ・マリアーノ」だったと言います。しかし、そのマリアーノは数年前に閉店してしまい、すでに存在しないことが今回の旅でわかりました。マリアーノという名前は、サイゼリヤの昔の会社名です。

 

もっと早くイタリアに来るべきでした。いずれ行かなければいけないと思っていた長年の思いを、今回実現したわけです。なぜなら、2023年は私にとって一つの区切りだからです。世界最大級のイタリアレストランチェーンを築き上げた正垣さんは、その人生を変えたマリアーノという店を購入するべきでした。そしたら、私もマリアーノを体験できたのに。イタリア料理の話、ワインの話…いろいろな話を、若い頃に正垣さんから聞いていましたので、今回イタリアに来たのは、私にとって特別な意味があります。

原理原則を研究したからこそ安くできた

若い頃、サイゼリヤの正垣さんに憧れて「サイゼリヤのような会計事務所を作ろう」と決心させてくれたのも、正垣さんです。その試行錯誤から、私たちは結果として業種特化にこだわりました。

 

さまざまな業種に特化してますが、特に成功してるのはコンビニエンスストアの店舗で、2023年12月の時点で約5425店舗。日本のFC加盟店の約10%のお客様に、私たちSAKURA United Solutionはサービスをご提供しております。感謝に堪えません。オーナーの皆様のお陰で、私たちはご飯を食べさせていただいています。

 

最近の話ですが、とあるご高齢の、浦和の会計事務所の税理士先生からお小言の電話をいただきました。ご自身の名前を明らかにして 私どもの勤務の税理士にキツイクレーム電話をしたのですから、相当な覚悟でしょう。きっと思い余って、相当にビジネスが苦しいのでしょう。

 

電話の内容は、「あなたたちのような安い値段で商売をする会計事務所がいるから、自分たちのようなまともな会計事務所が食えなくなってしまうんだ」というもの。お話を詳しく伺うために、私の方からも折り返しのお電話をしたのですが、先方からはその後一向にお電話をいただけませんでした。まさか私から電話がかかってくるとは思わなかったのでしょう。

 

私たちは、ただ安くサービスをご提供しているわけではありません。安くする、安くできる原理原則を研究したから、その結果安価にできたということです。「安くすること=儲からなくなる」というのは、素人の考えです。値段を下げることによって、それを理由にサービスを絞り込む。つまり、作業をトレードオフして、生産性を上げて値段を下げても、収益性が上がる。そんなことを実現できるという経営の原理原則を、多くの会計事務所は理解できていないのです。

 

人件費が上がっているのに、多くの会計事務所は値上げをしないのは、こういった科学がないからです。儲け主義とか、そんなことではありません。適正利潤がなければ、営利組織は維持存続できないのです。この原理原則がわからない。外的な要因で、コストが上がった場合、内部努力はしますが、当然収益構造のパズルの変化から値上げをするのが原理原則です。この無見識を反省すべきでしょう。自らの無学無能、無見識、無チャレンジを反省すべきだと私は思います。

私が正垣さんから学び実行した3つのこと

私が正垣さんから学び、実行したことは以下の3つです。

 

1 トレードオフ

幕内弁当のような、何でも乗せてのお客の言いなりのサービスを作って、本来ならやらない方が良いサービスをだらしなく提供するのをやめたこと。サービスを絞り込まないで、値段を高くしたままにするのをやめたこと。会計や税法について素人であるお客様が必要なサービス、必要充分なサービス、機能を絞り込んで、単品サービスとして価格競争力のあるリーズナブルプライスを提案すること。ここを提案して、営業でその合理性を訴えて勝負すること。

 

2 選択と集中

1のトレードオフを実現するために、提供するサービス、そしてマーケットや客層の絞り込みを徹底したこと。

 

3 コーディネーションと提案

トレードオフを実行したシンプルなサービスを、お客様が好きに自由に選べるようにしたこと。予算がないなら、シンプルな単品サービスを。手厚いサービスが必要なら、オプションを追加選択してフルコースのサービスをお客様が選べるようにしたこと。

 

 

例えばサイゼリヤは、100円のワインから始まって、400円の前菜サラダ。800円のハンバーグステーキのようなメインディッシュ。同じく、600円のスパゲティやピザ。今は値上がりしたから無理でしょうけれども、当時は2000円でコース料理を食べられるように、コーディネーションという形でフルコースを食べられるように設計されています。それをお客様に提案したのです。

 

これは、当時のペガサスクラブの渥美俊一さんの教えです。サイゼリヤと全く同じことをやったのが、ニトリです。ニトリを見ていると、必ず「生活提案」があります。単に家具を売るのではなく、コーディネーションを提案しているのです。

 

私は、サイゼリヤがイタリア料理でやっていることを会計事務所に応用しました。だから、安売りするから悪いと言われる筋合いはありません。経営を科学した結果なのです。単純に応用して、実行したまでです。業種特化した部分に関しては、一般的な会計事務所の生産性の3倍はあります。

投資とはコストダウンになり

業種特化し、サービスやマーケットを絞り込みつつも、シンプルなサービスから手厚いフルコースのようなサービスまでラインナップした。そして、高い生産性を実現した。これが私たちの原動力であり、強みであり足腰です。ここに、営業力=提案力。人材不足を補うBPOの仕組み。それらを乗せて、今後さらに強化していきます。

 

改めて気づいた、正垣さんから教えられた「投資とはコストダウンなり」という言葉。高価なある会計事務所専用システムに投資することを決めました。さらなるフルラインナップ提案をするために、BPOとコンサルティングサービスの充実を目指し、各地の同志とともに全国展開します。2024年には、長年温めてきたアライアンス構想を、本格的に静かに船出させます。

 

イタリア人が作り上げてきたイタリア料理を模倣して、極東の日本人が世界一のイタリア料理チェーンを作った。陽気なラテン系のイタリア人は、その理由を理解できていないと思います。それは、伝統にあぐらをかいているからです。

 

サイゼリヤの料理を、ジャンクフードと決めつける人がいます。おいしすぎる味は、飽きます。おいしいという味覚にも、個人差があります。正垣さんは、「おふくろの味」と例を言います。この値段でこの味。サイゼリヤの料理と値段を絶賛するイタリア人がいるという事実。第一、私は好きです。

 

「安さは1つの機能である」。これも正垣さんの言葉です。私は、この同じ生き方を研究して貫きたいと思います。今頃になっても、私たちにクレームをつけて怒鳴り込んでくる同業の税理士がいるということ。まだまだ、あぐらをかいている税理士が多いということです。クレームを言われれば言われるほど、私はマルティン・ルターになる。カルバンになる。野茂英雄のような超常識な先駆者になると燃えるわけです。

 

今回のイタリアの旅で、自らの原点に回帰するとともに、志を新たにしています。