なぜ経営者は無借金経営を目指す必要がないのか?
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ある地方銀行の東京支店長とお話をしました。
地方銀行の本部で、
「無借金経営を目指せ!銀行からお金を借りるな!」
と中小企業の経営者に啓蒙している税理士さんの話題が挙がったそうです。
私は即答しました。
「金利が暴騰して、お金を借りていたらとんでもない金利コストになるという状況でしたら、
無借金経営を目指せというのは結構なことです。
それなら、いつでも無借金になれる財務状況を作るのはかまわないでしょう。
しかし日本はそんな環境ではありません。
銀行と日常取引から縁を切るということは、私は経営者の端くれとして恐ろしくてできません」
日本は地震大国です。
地震が起こってライフラインがズタズタになり、
売上が半年上がらないという状況になったら一体だれが助けてくれるのでしょうか?
火災になったとしても、設備再建費用の一部の火災保険が一般的です。
「売上が激減した。利益がなくなった」という状況下で、
利益を保険の対象として担保してくれる保険は通常、利益保険と言います。
利益自体を保険の対象としている保険に入っている日本企業は本当に少数でしょう。
利益保険に加入していたとしても、会社の再建には利益だけでは不充分です。
震災も同様です。地震保険は、損失全体を保証してくれるものではありません。
ほんの一部ですし、入金までに相当な時間がかかります。
国は、震災で困窮する企業を救済するために、
資金をどんどん出せと地域の金融機関に言うでしょう。
ですが、融資の手を差し伸べる先には優先順位があります。
当然ながら、すでに取引のある企業、すでに貸付があり倒産されては困る企業が先です。
震災後に融資の申し込みが殺到している中で、
全くご縁のない企業にわざわざ手を差し伸べることはありません。
限られた人員で融資審査作業を行うわけですから、
営利企業として金融機関は優先順位を考えるわけです。
大切なのは、無借金ができる財務体質を作ることです。
しかし健全にお金を借りて使わないのなら、定期預金に入れておくことです。
銀行が3000万円貸してくれると言うなら、必要資金が2000万円でも3000万円借りておいて、1000万円は定期預金で銀行に積んでおけばいい。
本当に困ったとき、定期預金に入れた1000万円を取り崩して使えば良いのですから。
銀行が要求した引き出し不能の歩積預金ではありません。あくまでも自主的な歩積預金です。
金利はかかりますが、会社経営の安心材料として、金利コストは決して高くはないはずです。
経営者が安心して眠れるための睡眠薬や精神安定剤とでも考えたらどうでしょうか。