会計事務所はさまざまなビジネスの舞台裏を見られる
iUの茂木さんから、「今の事業をどのように選んだのか?」というご質問をいただきました。私たちは会計事務所としてスタートしましたが、今では新たな事業の柱としてコンサルティング事業を始めようとしています。税務会計という過去処理の仕事から、起業家・経営者のみなさんの未来にかかわる仕事へのモデルチェンジであり、新たな挑戦です。本稿が、みなさんの事業選びや事業転換の参考になればと思います。
※本稿は、SAKURA United SolutionのYouTubeチャンネル内に開設した、iU学生起業家の茂木大暉氏(GADGETANKER LLC CEO)の経営相談に応える新コーナーより一部抜粋、編集したものです。
※iU(iU情報経営イノベーション専門職大学):2020年に設置され、東京都墨田区文花に本部を置く日本の私立専門職大学。産業界と連携した新しい学び、イノベーションを起こす人材を育成している。井上一生は、iUの客員教授を務めている。
【iU学生起業家の疑問・課題をトコトン解決】深夜ラジオ感覚で“聞く”経営相談室
会計事務所は天職だと思った
私の父は、いろいろな商売をしていました。鋳物屋、診療所経営…最終的には生コン(生コンクリート)事業を経営していて、子どもの頃は運転手さんが集まっている光景を眺めていたものです。今っぽくカッコ良く言えば、「連続起業家」だったのかもしれません。
起業家・経営者はさまざまなことに挑戦しますが、正直に言えばなにをやったら良いのかみんな自信がないのです。私は日々奮闘する父の姿を見て育ちましたから、経営のことを勉強しようと思いました。それで、大学は経営学部を選んだのです。
大学の友人が「公認会計士になる」と言い、私も友人が出る授業について行ったことがあります。そこではカネ勘定の話ばかりで、退屈だと感じました。私はカネ勘定のことを勉強したいわけではなく、経営のことを勉強したかったからです。
その後の経緯は、「学生時代からの圧倒的な上昇志向と独立起業という選択」でも書いたとおりですが、ふと「人生や経営には、こういうことも必要か」と考え、簿記を勉強することを決めました。中小企業診断士か税理士かで迷いましたが、結果的には税理士への道を選びました。その決断をしたのは、「資金繰りで苦しむ経営者を減らしたい、支援したい」という思いがあったからです。その思いは今も変わりません。
会計事務所は、さまざまなビジネスの舞台裏を見られる仕事です。経営者がどんなにカッコつけても、数字で見えてしまう。日々どんなことをしているのか、お金や時間の使い方が丸裸でわかります。お金の使い方には、その人の人間性や心理状況が現れると思います。数字の世界から経営を見ることができる会計事務所は、自分の天職かなと思うようになりました。
起業家・経営者の未来にかかわる仕事をしたい
ただ、会計事務所の仕事は税務会計という過去処理の仕事です。本当は、もっと起業家・経営者の未来にかかわる仕事をしたい。税務会計は、いわば静脈です。今後はさらに、税務会計・管理会計、労務、BPO、マーケティング、コンサルティングといった動脈的な支援を強化していきます。
税理士はたくさんの経営者とかかわりますから、経営の神髄を知ったような気持ちになります。しかし、当然ですが税理士でも失敗するのです。イチローのような天才でも打率3割です。すべての挑戦を成功させることはできません。それでも挫けず、トライ&エラーをくり返すのがベンチャー魂だと思います。
例えば、フランチャイズビジネスも成功するのは簡単なことではありません。フランチャイズ本部が提示する数字どおりにはいかないものです。数多あるフランチャイズビジネスの中でも、コンビニエンスストアは実に良くできているビジネスモデルだと思います。重要なのは立地と採用・マネジメントで、商品開発やPR・宣伝は本部が行ってくれます。しかし、それでもうまくいかないことがあるわけです。ビジネスモデルの完成度がどんなに高くても、成功するケースと失敗するケースがあるのです。
私は、少しでも確実なものを積み重ね、ビジネスの成功確率を上げるお手伝いをしていきたいと思います。それが、私の次の天職だと確信しています。