ベトナムで感じた日本の中小企業の生き残り戦略
私がベトナムで感じた、日本の中小企業の生き残り戦略とは何か。「未来に生存する企業の3条件」と、多様性ある環境を自ら喜んで取り入れることの重要性についてお伝えします。10年後も50年後も100年後も、会社を存続させたいと願う経営者の方は、ぜひご覧ください。
(ハノイ工科大学研究棟内のビジネスシェアオフィス)
未来に生存する企業の3条件とは
私は2023年の夏に、出張でベトナムを訪れました。この国は、まだまだ若くて活気あふれる国です。IT人材も豊富で、多くのエンジニアを育成しています。ベトナムは日本企業にとって、単なる安い労働力の供給国ではなく、ビジネスパートナーとして重要な存在になっていると感じました。
私はかつて「がんばれ社長!」のメルマガ等で有名な武沢信行先生から、中小企業庁の統計から分析した「未来に生存する企業の3条件」というものを教えていただいたことがあります。それは、以下のような条件でした。
1.ITへの投資をしている
2.ビジネスが国際的視点に立っている
3.早めの事業承継の準備をしている
私たちは、これらの条件を満たすように常に努力しています。私たちのグループには、中国人とベトナム人とペルー関係のスペイン語を話せる日系人が在籍しています。チャンスがあれば、積極的に海外の人材を採用する理由は、昭和や平成のように日本人だけで仕事を成り立たせる時代はすでに終わり、日本人や日本企業が日本という市場だけで生き残れる時代ではないと強く思うからです。
多様性ある環境を自ら喜んで取り入れる
(ハノイ工科大学研究棟内のビジネスシェアオフィス)
私は今回の視察でベトナムで食事をしたとき、かつて日本から東南アジアに旅行すると感じた価格差の優越感がなくなっていることに気づきました。現地の庶民的な食事であっても、そのくらいイーブンになってきているのです。大した価格差はもうなくなっています。現在、システム開発でも日本人だけで開発人材を賄うことはできません。日本一国では、生き延びることはもうできないのです。ベトナムのような、若い人材がたくさん活躍する国の力を借りなければなりません。
そこで私は、海外の優秀な起業家や人材に、どんどん日本に進出してもらえるような環境を作りたいと考えています。そのためには、外国人ネイティブの人材を事務所の中に育てていく必要があります。また、ハンディキャップを持つ人もグループには5人在籍していますが、彼ら彼女らも会社にいてもらう理由は同じです。多様性ある環境を自ら喜んで取り入れなければ、将来のビジネス社会の環境変化に私たちは耐えられることができなくなると思います。
おかげさまで、日本は観光についてはインバウンドで成功しているようです。確かに日本文化に対するリスペクトや憧憬もあるのでしょうが、円安や先進国にしては物価が安いことも日本旅行が人気な理由でしょう。観光だけでなくビジネスでも、日本は海外の優秀な人材に来てもらえるようなマーケットにならなければならないと思います。ですから、私はそういった人材とご縁をしますし、そういった方々とビジネスをどのように作るのかを一緒に研究しているわけです。
現場と経営トップの乖離を埋める努力
私は経営トップの立場として、現場で働いてくれている人たちにも、このような考え方を理解してもらいたいと思っています。現場は日々の仕事に追われていて、余計で面倒なことは持ち込んでくれるなと考えている人も多いかもしれません。現場は、今現在がすべてです。
しかし私たち経営者は、悲観的に未来を考えて、楽観的に今をチャレンジしようとしています。煎じ詰めれば、やってみなきゃわからないのです。明日の幹を作るために、幹に育つ確率は低くても、今日種を植え続けなければいけないのです。私たちは、この乖離を理解して、関係者それぞれに十分に説明し、理解を得る努力をしなければいけないと今、反省しています。
私はベトナムで感じたことを、日本の中小企業のみなさんにも伝えたいと思っています。日本企業が生き残るためには、前述の3条件を常に意識し、多様性ある環境を自ら喜んで取り入れることが大切です。また、現場と経営トップの乖離を埋める努力も欠かせません。